【書評】予想どおりに不合理
こんにちは、ごーいわです。
行動経済学という学問をご存知だろうか?
行動経済学とは、経済学に心理学の観点で観察された事実を取り入れ研究していく学問、そう定義されているようだ。
どうだろう?これだけでとても興味深く感じてしまうのは私だけだろうか。
心理学と言うのはいつだって興味深い。だって人間だもの。
その心理学を、我々の日常生活とは切っても切れない経済学に取り入れたとあっては知的欲求がくすぐられずにはいられない。
とゆーことで、行動経済学をとても分かりやすい身近な実験を基に解説している1冊を読んでみたので紹介したい。
今回紹介する本は
「予想どおりに不合理」
である。
「自分は物事を論理的に考えた上で行動を選択している。」
ほとんどの人はそうやって自分を信じて疑わないだろう。そうに決まっている。
逆に、「私はあらゆることをてきとーに決めてるからいっつも損ばかりしてると思うー♪」
こんなことを言う人がいたら神経を疑う。
少なくとも一緒に仕事をしたいとは思わない。
でも可愛らしい女性であればそれはそれでありなんじゃないかと思う。(何を言っている?)
しかし、論理的だと信じている自分の選択や行動には実は心理的作用が多分に働いており、ゆえに人は論理的ではなく全くもって不合理な判断を下している!
それが本書の論旨である。
身近で分かりやすい事例を基にさまざまな仮説を立て、実証実験でそれを証明した上で解説してくれているので大変わかりやすく読みやすく、納得感がある。
これを読めば新しい商売を考える上での参考になるのでは?と思うし、マーケティングの武器にもなるだろうと思われる。
私はマーケティングに関して知識が浅いのだが、そもそもマーケティング理論はこの行動経済学を応用しているのではないかと思える程だ。
同時に、心理学って人間社会を生きる上で絶対知ってた方が得だよね、と改めて考えさせられた。
それではここから簡単に本書の中身を紹介していきたい。
「人は、そうであってはならないものまで相対的に判断している」
らしいのだ。
本書の最初に論じられている説なのだが、これは一人の消費者として知っておいて損はない貴重な話であった。
では、そうであってはならないものまで相対的に判断しているとはどういうことか?
雑誌の年間購読サービスを例に実験を行い、それを証明してくれた。
雑誌の年間購読について100人の大学生を対象に以下の3パターンの選択肢を用意し、どの選択肢のサービスを購入するかをアンケート形式で調査した。
①ウェブ版だけの購読 59ドル
②印刷版だけの購読 125ドル
③ウェブ版と印刷版のセット購読 125ドル
アンケートの結果はこうなる。
①を選んだ人 16人
②を選んだ人 0人
③を選んだ人 84人
お気付きだろう。②と③にはサービスのボリュームに大きな差があるにも関わらず値段が同じなのだ。このような状況で②を選ぶ人はあまりに愚かだと言わざるを得ない。
しかし幸いにも②を選んだ人はいない。
これだけを見れば、人は合理的な判断ができる、と言えるだろう。
ここでアンケートを修正する。
内容は同じく雑誌の年間購読、調査対象も同じく大学生100人。変更点として選択肢を以下の2つにした。
①ウェブ版だけの購読 59ドル
②ウェブ版と印刷版のセット購読 125ドル
先のアンケートで誰からも選ばれなかった選択肢を外したわけだ。
この修正後のアンケート結果について論理的に推測するのであれば
①ウェブ版だけの購読 16人
②ウェブ版と印刷版のセット購読 84人
ということになる。
なぜなら除外された選択肢はそもそも誰も選ばなかったのだから。
しかし、このアンケート結果は論理的推測とは全く異なるものとなった。結果は以下の通り
①ウェブ版だけの購読 68人
②ウェブ版と印刷版のセット購読 32人
この一貫性のないアンケート結果こそが我々人間が「相対的に判断している」ことの証明に他ならないというわけだ。
そのことを前者の3択のアンケートを基に解説しているのだが、要するに人は比較が容易なものに焦点を当ててしまいがちで、その比較結果が最終判断に大きな影響を及ぼす、ということだ。
①と③の比較は容易ではない。値段も大きく違えば、その分受けられるサービスにも大きな違いがあるのだから。
しかし②と③の比較はあまりにも容易だ。
値段が全く同じであるにも関わらず、受けられるサービスに大きな差があるのだから③を選ぶ以外に考えられない。
そして容易な比較によって得られた③に対する高評価が、本来難しかったはずの①と③の比較に影響を及ぼしてしまった。それこそが前者の3択のアンケート結果と後者の2択のアンケート結果のとても論理的とは言えない相違である。
著者の言うとおりだ、我々は「不合理」なのである。ざんねんっ!
ちなみにこの前者の3択のアンケートと同じサービス展開は、実際に有名な雑誌が現実に実施しているものらしい。
ここでいう②のような選択肢は「おとり選択肢」と呼ばれ、③の選択肢(最も単価が高い選択肢)を選ぶよう誘導するためのマーケティング的なトラップなんだとか。
怖いですな~!こういったことに無知のままでいると、自覚がないままに搾取される側に回されてしまうのだろう。
この本に出会えたことに感謝せずにはいられなかった。どうもありがとう
てな具合で、経済活動の中で我々がいかに心理的作用の影響を受け、その結果不合理な判断をしているのかということが、およそ450ページにわたりさまざまな実験結果と共に論じられている。
本書は秘伝の巻物のようだ。
先の例のように、本書の教えは消費者としては時に教訓となり、ビジネスマンとしては時にマーケティングの先生になる。
あっぱれ行動経済学!
私が本記事で紹介したのは本書の冒頭のほんの一部に過ぎない。
この記事をお読み頂き、ほんのちょっぴりでも頷いたり焦ったりした方は是非ともこの本を読んでいただきたい。
きっとこれからの日々の生活の中での選択が真に有意義なものになるに違いない。
予想どおりに不合理
※次回更新は5/27or31予定※ |